日本白斑学会 事務局

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挨拶

日本白斑学会設立と今後への期待

日本白斑学会理事長 大阪市立大学 特任教授
会 長 片 山 一 朗

尋常性白斑は2011年の国際コンセンサス会議で大きく3型に分類された。汎発性白斑は白斑という病名で統一され、疫学、基礎研究、重症度や治療の評価法が世界的な規模で進められている。わが国では2012年には厚労省研究班による白斑診療ガイドラインの策定、2013年に社会問題となったロドデンデロール白斑の病態研究や患者救済事業の開始にともない白斑の研究が活発に進められるようになった。国内外での白斑研究の新しい時代の扉が開き、我が国における国際的な窓口設置と国内の白斑研究者の意見交換の場が必要であるとの機運が高まり、2015年、日本色素細胞学会の後援のもと、その下部組織として白斑研究委員会(仮称)が設置された。この間、2014年に済州島で開催された第3回東アジア皮膚科学会時に、全南大学皮膚科教授の李承晢先生、釜山の東亜大学皮膚科教授の金基豪先生などから韓国、日本、台湾、中国の4カ国で東アジア白斑会議を設立しようとの提案があり、第一回のKickoff meetingが2016年ソウルで開催された。アジアからは台湾高雄大学の藍政哲教授、上海復旦大学の Leihong Flora Xiang教授が招待講演を、またソウルで開業されている韓先生、東国大学の李教授が講演された。世界的にも、2010年にAlain Taieb教授(Bordeaux大学)とMauro Picardo教授(San Gallicano Dermatology研究所)が Vitiligo Global Issues Consensus Conference (VGICC) を立ち上げ、私や鈴木民夫先生、大磯直樹先生、川上民裕先生らの我が国を含めた世界中のvitiligo研究者がインターネット、あるいは時に一堂に会して、これまでにvitiligoに関わる多くの諸問題、基礎研究、新しい治療法の開発に向けて議論を重ねてきた。その中で、疾患の定義や病変の評価等についてこれまでに合意が形成され、成果が報告されてきた。このような機運の中で添付の設立委員の合意をえて日本色素細胞学会とは別組織として日本白斑学会が設立され、2018年3月にTaieb教授やEAVAの主要メンバーをお招きし、第1回日本白斑学会(JSV)学術大会(第2回EAVAと合同)が大阪で開催されるに至った。

白斑はHE染色では一見、組織学的な特徴がみえてこない疾患ではあるが、そこに新たな画像解析法や3種、4種の色素標識蛍光抗体を用いた解析で白斑部を観察すると、驚くような細胞間あるいは組織間のクロストーク像が現れ、新たな白斑の病因論が見えてくる。私自身、皮膚科の研究のトレンドの移り変わりには興味があるが、1950年代から60年代の初頭は清寺眞先生や三嶋豊先生、Ken Hashimoto先生など電子顕微鏡を用いた形態学とDOPA反応などの生化学的な手法を用いて皮膚の細胞機能の研究や皮膚疾患での動態研究が大きく発展した。70年代の免疫学、分子生物学が爆発的に発展した頃は多くの若い研究者が新しい発見を求めて米国に留学した時期でもある。21世紀の現在、研究のトレンドはiPS細胞の臨床応用や次世代シークエンサーによる疾患発症責任遺伝子の同定、2光子顕微鏡などによる4次元組織解析、Optogenetics、Gene editionなどであるが、一部では研究のための研究になりつつあり、高額な治療薬の後追い実験などが主になり、臨床発のオリジナルな研究が激減している現状を危ぶむ声もある。新しい解析技術や方法論を創り出す事が究極のサイエンスであり、それが研究のモチベーションとなるが、臨床の教室で可能な研究をどう進めて行くかは、やはり疾患を診断し、治療していく現場の医師が解決したい問題点を明らかにし、より良い治療を難治性の患者に提供していくことが最も重要と考える。その意味で白斑研究のパイオニアである三嶋豊神戸大学名誉教授は生涯を白斑と黒色腫の治療開発にかけられた先生である。我々もまた最新の解析技術を用い、創薬に繋がるオリジナルな日本発の研究を創り出して行くことが最重要課題であり、日本白斑学会がその発展に少しでも寄与できればと考える。

2019年11月には第二回の学会が岡山で、また2020年の第16回国際色素細胞学会が山形でいづれも鈴木民夫教授を会頭として開催されることになっている。白斑の研究、臨床、美容医療の分野では東アジア諸国の韓国、台湾、中国やインドは大変Activeで国際学会では毎回若い医師の参加も多く、日本における白斑研究がさらに発展することを願う次第である。